第19章 名前呼び――犬飼澄晴
「ねぇねぇ朝霧ちゃん」
『…………ちゃん付けで呼ぶのやめて、犬飼』
ついてくる犬飼に見向きもせず一喝する夏海のあとをめげずに追いかける
「…………じゃあ、夏海?」
『………何でいきなり名前呼び……!?』
名前で呼ぶと焦ったように振り返った
(…………ああ、可愛い………)
「いいじゃん!そっちのが可愛いし!」
『………可愛いって………私たち会って一時間もたってないんだよ?』
「そんなの関係ないって!夏海も俺のことは澄晴って呼んでよ!」
『やだ』
本当に嫌そうに言う夏海と唇を尖らせる犬飼
「えー、ケチ!」
『ケチって…………どうして犬飼はそこまで私に関わるの?』
「どうしてって………好きだから」
犬飼の言葉を聞いて夏海は思わず足を止めた
『………は?』
「いや、だから、好きなんだよ。夏海が」
『ハァッ!?待って!?私たちあってまだ一時間―――』
「恋に時間は関係ないんだよ?夏海」
『キモいわ!!』
ドヤ顔で言う犬飼の頭をひっぱたくと、なんで!!といわれた
「俺、本気だよ!?今までは女の子なんか遊びだったけど夏海のことは本気で好き!!こんな気持ちになったのは初めてなんだ!!」
『…………今まで遊び………。その言葉のせいでますます信用できなくなるんだけど………』
「どうしたら信じてもらえる?」
『どうって…………まずチャラすぎるのを直してもらえば………』
「わかった!」
そう言うと犬飼はズボンのポケットからスマホを取り出すと電話帳を開いた
『え!?何するの!?』
「………氷見とか加古さんとか以外の女の子のアドレスを全部消す!!」
『ええ!?ちょっ…………まっ………』
ピッ
犬飼は夏海の制止も聞かずアドレスを消した
「…………よしっ!」
『………え?ほんとに消したの?』
ほら、と見せてくる犬飼のスマホには女子のアドレスはほんの数件しかなかった
『…………冗談でいったのに………』
「冗談でもなんでも認めてもらえるなら俺はなんでもする!!」
真剣な表情で言う犬飼を少しかっこいいと思ってしまった夏海は視線をそらした
『………そ、それでもまだあったばかりだし、私はまだ好きになれないよ』