第10章 お泊まり――米屋陽介
ザァーーーーー
「あ゛ーーもう!!トリガー使いてー!」
『もう無駄だって!!二人ともびしょびしょ!!』
大雨のなか走って帰る影が2つあった
その影の正体は、三輪隊の米屋陽介、そして、部隊には所属していないものの実力は確かな朝霧夏海
この二人は所謂幼馴染みという関係だった
『…………ハァッ……ハァッ……』
俺は後ろを走る夏海の息が荒くなっていることに気づいた
大雨のせいで鞄も服もびしょびしょになっていて、かなりの重さになっていた
俺は夏海の隣に並んだ
「夏海!!鞄よこせ!」
『……………うんっ!!』
足を止めることなく鞄を渡して夏海と俺は走り続けた
夏海は鞄がなくなったからかさっきより少しスピードが上がっていた
「夏海!俺んち寄ってけ!」
『わかった!』
なんとか、無事に俺の家に着いた
「ただいまー……」
『お邪魔します……』
「陽介、お帰り。……………あら、夏海ちゃん!ずぶ濡れじゃあないの!!」
と、お袋はリビングから顔を出すなり夏海を見ていった
「でも、悪いけど私今からでないといけないの。陽介今日は私帰らないから」
「ああ」
『こちらこそすみません。すぐ帰るので……』
「ダメよ!シャワー浴びて!それから今日は家に泊まっていきなさい」
『え!?』
「ちょっ………何言ってんだよ!」
「当たり前じゃない!シャワー浴びないと風邪引くし、この雨のなか帰ったら、また、濡れちゃうでしょ!!
だから、今日はゆっくりしていってね!夏海ちゃん!」
そういうと、すぐに母さんは家を出ていった
「……………まぁ、とにかくシャワーだな。夏海、入ってこいよ」
『うん、ありがとう』
脱衣所に入っていった夏海を見送った俺は、自分の部屋に戻った