第9章 初恋――三輪秀次
朝霧はさっきと同じ場所にいた
「朝霧………」
声を掛けると、ゆっくりとこちらを向いた
『秀次…………どうしたの?』
俺はその問いには答えずに朝霧の体を抱き締めた
『えっ!?秀次!?』
「朝霧………俺はお前が好きだ」
そう告げると、朝霧が顔を上げた
『…………え?夢じゃないよね?』
「夢じゃない」
朝霧は自分の頬を引っ張ったりつねったりしていたが、よほど強い力でやって、痛かったのか目に涙を浮かべて俺を見た
「………ったく………夢じゃないっていってるだろ……」
赤くなってしまった朝霧の頬を撫でながら俺は朝霧に言った
『秀次……………。良かった……。本当にもう嫌われたかと思ってた……』
俺の胸に頭を押し付けそう言う朝霧の顔を上げ、俺は口付けた
唇を離すと朝霧の顔は赤く染まっていた
「フッ…………リンゴみたいだな」
『う、うるさい!』
「覚悟しろよ?たっぷり可愛がってやるから」
『こっちだって、皆の前でもベタベタしてやるから!!』
「………それはやめろ」
『何でよ!!』
「何でもだ!」
『ぶー!』
リスみたいに頬をふくらませる朝霧の頭を撫でると不機嫌だったのが嘘のように満面の笑みを浮かべる
「……単純だな」
『うるさい!』
「秀次が笑ってる」
「三輪が笑ってるとこ始めてみたぜ」
「恋って人を変えるものね」
「蓮が言うと説得力がハンパないわね」
「「確かに」」
ひそかに覗き見する四人だったが、迅が来たことで大声を出してしまい、米屋と出水はこっぴどく説教されるのであった