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水蜜桃Series

第1章 水蜜桃の未来





「トリックオアトリート!」
「…発音がなっていないな。いいか、本場の発音というものは、」
「おかしくれなきゃいたずらしちゃうよ!」
「ふむ、菓子か。ビスケットならその棚に入っているが。」
「ビスケット!だいすき!あじはなに?」
「チョコだった気がする。この間風祭が持ってきたんだ。」
「しょうちゃんが?ねぇ、ちょうだい!」


ピョコピョコという発音がピッタリくるような素早さで、童女が部屋のドアをバンと開けた。視線の先に佇む話しかけるべき人間は今日もまた小難しい読書タイムらしい。題名すら読むのも疲れるような本を何食わぬ顔で見つめつつ、活字だらけで全く隙の無いその表面をサラサラと読み進めてそろそろ終わるようだ。そのタイミングで勢いよく扉が開いたのだが、もう部屋の主は慣れっこだというように大して反応も示さずに視線を寄越した。瞳に映るは二桁の年齢にも満たない小さな小さな童女。独特の細さに元が痩せ方なのか剥き出しの鎖骨が若干痛々しく目に映る。ふわりとしたワンピースを着込んでその下に薄い長袖を羽織っているらしい、「ちょうだい!」と伸ばす両手が少し童女には大きいのか長袖で隠れていた。


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