第8章 ゴメンネよりも、ありがとう。
山口side
うわぁー……
たった数日家を空けただけなのに、もう二度と帰れないと思っていたからか、物凄く懐かしく感じるなぁ。
……でも、もうすぐ本当にお別れなんだよな…。
車から降りたツッキーとめぐみの背中を見つめていると、
ふと、めぐみの着ている淡いマロン色のセーターの背中の部分が少し捲れているのに気がついた。
「ねぇ、め『……』
…ッ!!!」
その瞬間、眼の前の、ほんの一瞬の出来事に、俺は思考が停止した。
本当にほんの一瞬だったけれど、、
あまりに自然に、ツッキーがめぐみのセーターの捲れを直したもんだから、
本当に、ビックリした…。
それに、あの、嫌みがどうしても出てきちゃうツッキーが、なにも言わずに捲れを直してあげるだなんて。
それに、、それだけでも充分に驚きなのに、
めぐみに触れたツッキーの手は、ただ後ろから見ていただけだけど、、
それでも分かるくらいに、優しく触れていた…。
あのふたりに、俺が入る分のスペースは、まだ残ってるのだろうか。
自信…
無いな…。
「おかえり!忠!」
声に反応して俯きかけていた顔を上げると、さっきまでなにを考えていたのか忘れそうになるくらい、満面の笑みでめぐみが俺を見てくれていた。
「…おかえり。/」
もちろん。その隣には、ほんの少しだけ頬を赤くしたツッキーも。
ねぇ、ツッキー
俺、バカだったみたい…。
こんなにふたりのこと大好きなのに、
ふたりを失うことばかり考えてた…。
こんなにも、あたたかい笑顔と、照れくさそうな顔で、迎えてくれる人達が、、すぐそばに居たのに。
「…ッ」
「ゴメンね…、忠。大切な幼馴染みなのに。
私、忠を傷つけてばかりだった。忠の優しさに甘えて…
蛍への気持ちを誤魔化してばかりだった。」
俺の頬を伝う潮水を、俺の大好きな人が優しく指で拭き取ってくれる。
それなのに、情けないくらいに涙が溢れて、顔を上げられない。