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「別れ」(1)

第1章 別れ(1)


あなたと別れて何年経つのだろうか?


別れたんじゃない………離れ離れになったんだ


あなたはこの世界のどこを探しても──…


もう…いない──……






心の中にある種は

あの時からずっと
未だ蕾にならないまま。





今は使っていない昔の携帯を持ち、風呂に入りながら音楽を聴く。

ゆったり湯船につかってると、突然携帯の音楽が…止まった…?

疑問符を浮かべながら見てみると、


「メールきてる…!?
そんなわけないじゃん!!これ昔の携帯だぞ!?」


驚いて携帯の待ち受け画面を何度も確認する。
…やはりメールがきている。


「まさか…これって姉ちゃんが昔俺に話した怖い話か…?」


ふっと過去に姉が俺に話した怖い話が脳裏に浮かぶ。
その話が、今この状況と全く似ているのだ。


「いや…そんな筈ない。
あれは姉ちゃんの作り話だ…」


そう自分に言い聞かせ…恐る恐る携帯の受信フォルダを開いてみる…と。


『なぎさくん?』


「俺の…名前…?
まさ、か…未来(みれい)…?」


未来…俺の一番大切で大好きな…彼女“だった”。
この携帯を使っていた時に…亡くなってしまった。

その未来から…信じられないが今、メールが届いている…。


『ねぇなぎさくん、心配しないで。
あなたの想いはちゃんと私に届いてるよ。
届いている。でもずっと私を一番に考えないで?
自分を一番に考えて。
大丈夫だから。ね?』


返信…しようとして止めた。
だってこれは昔の携帯…出来る筈がなかった。

…分かっている筈なのに…勝手に指が返信しようと動いてしまう。


「…馬鹿だな…俺」


苦く笑って携帯の電源ボタンをそっと押す。
待ち受け画面に戻ったのを確認し、静かに携帯を閉じた。


「あーくそっ!…涙出てきやがった…」


彼女の事を思い出して悲しくなったからじゃない。
このメールが誰かの悪戯でも…単純に嬉しかったから。

彼女が書いたみたいな文面…今の俺にはそれが嬉しかったんだ。



お風呂から上がった後、姉に話せるわけないし…黙って自分の部屋に戻り、再び携帯の受信フォルダを開いた。


「でもこれ…一体なんだったんだろ…」


そう呟きながらお風呂で見たメールを開いてみると…そこには先程とは違う文面が書かれていた。


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