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~囚われの姫君~【中世☆黒子のバスケ】

第4章 【第三章】捕らえられた夜


「…一先ず、ここに居れば安全です。」


黒子と桃井は、追手から逃れて西棟の隠し部屋にいた。

黒子は連れていた桃井の手をゆっくり放し、姫を護れなかった両手を握りしめた。



マモレナカッタ。



悔しさに顔を歪め、心配で胸が押し潰されそうに苦しい。
黒子は、悪い予感を振り払うように自分の装備を確認しはじめた…



桃井は、肩で息をしながら辺りを見回す。


「…ここは?…」


埃っぽい約8畳程の部屋には、家具や絵、衣装箱などに布が掛かって置いてある。


「…確か、どなたか王家の方の荷物置き場かと…」


黒子は埃っぽい床に膝をつき、装備を広げ思考を巡らせていた。
黒子自身は、城内全ての隠し通路・部屋の場所は分かっていても、その部屋が誰の物なのかは知らない。


桃井はゆっくり部屋を歩き、小さい出窓に近づく。

外は、少し欠けた月と星が出ていた。


『昨日は満月だったのに…』


昨日、久しぶりに再会した親友は、子供の頃と変わらぬ笑顔で迎えてくれた。
そして同い年の皆で、ふざけて笑いあったあの時間が、まるで幻だったように感じる。


「美桜姫…」


ふと、口から零れた親友の名。


必死に黒子と桃井を庇う背中を思い出し、桃井は目を伏せる。


『美桜…。』



「美桜姫は必ず、僕が助け出します。…必ず。」


黒子の言葉に顔を上げると、黒子の真剣な水色の瞳とぶつかった。
桃井はその瞳に胸をドキドキさせ、同時に締め付けられる痛みも感じていた。


「…うん…、私の親友を…助けて 」


桃井は黒子に微笑みかけ、また窓の外を見た。
窓ガラスに、涙を流さない悲しい笑顔の桃井が、映っていた。


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