第10章 見えないライバル
「凪咲ー!」
昼休み。華楓は両手にあんぱんと紙パックのジュースを持って凪咲のクラスである1年4組に現れた。
「どうしたの?華楓がこっち来るなんて珍しいね」
教室内にいた凪咲は華楓のところに小走りで寄ってきた。
「あのさ、ノート貸してくれない?あ、先生来た」
立ち食いをしているのをバレたら不味いと思った華楓は咄嗟に教室内に入った華楓はドアに寄りかかってその場をやり過ごした。
「え、いいけど…ちょっと待ってて」
凪咲はいつもと少し変わった華楓に違和感を持ちつつもノートを取りに自席に行った。
「うん…あ、ツッキー!山口!」
凪咲は進学クラスで月島と山口と同じクラス。2人を見つけた華楓は2人に向かって手を振った。それに対し月島はスルーし山口は手を振り返した。
「にしても珍しいね。自分から私のところ来たりノート借りに来たり…」
「期末、赤点回避しないと遠征行けないからさ…じゃあこれとこれ借りるね」
ため息をつきながら凪咲のノートを受け取った華楓はあんぱんを頬張る。
「テスト勉強深刻そうなのにライブはやるんだぁ」
凪咲は華楓の手に書いてある"明日 19:00~スタジオ練"の文字を見逃さなかった。それにヘラヘラと返す華楓。
「勉強はいざとなったらなんとかなるっしょ!」
その瞬間教室にいた月島からのすごい視線を華楓は感じた。
「…勉強頑張ります」
勉強をやる意志を見せる一言を言わざるを得なかった華楓。それでもあまり嫌がらなかった華楓は
「いいねぇ4組」
「え…そう?」
思わず驚く凪咲。学校にほぼ無関心な華楓が言うのだから驚くのも無理はない。
「じゃあ進学クラス受ければよかったじゃん」
「え、それは嫌だ。進学する気ないし…」
「ふーん…いいじゃん華楓のクラスも。影山くんいるしさ」
凪咲の言葉に少し相づちをしていた華楓だったが、途中で固まり凪咲に言った。
「ねぇ…凪咲ってさ…」
「うん、何?」
「影山のこと好きなの?」
「…え?」
「だから、好きなの?影山」