第16章 奇跡は起きない

しかし、誠凛はどよめいた。


「同じ…？少し違うな。彼はテツヤと同じ特性を持ちながら基本性能は全て一回り高く、パス以外の技術も苦手がない。いわばテツヤは旧型、黛千尋は新型の『幻の六人目』だ」


こうなるように仕向けたのは私自身。

覚悟もできずに、征十郎のために…とやったあやまち。

それに巻き込まれた黛さん。

なのに、黛さんは…悪態はつくものの、しっかりとその勤めを果たし続けてきた。


「っしゃあ」

「ぐっ…」


黛さんのパスが通り、徐々に開き始めた点差。


「ナイスパァス！！」


永ちゃんは黛さんの背中を思いっきり叩く。

黛さんはそれに応えもせずに、何事もないような表情のままふぅと息をついた。


「（いつもそうだった…バスケをしてる時の黛さんの顔は…）」


まるであの時以降のテツ君のような顔。


「スティール！！」

「ぐっ…」

「ダメだよん！洛山相手にパス一つでも気ぃ抜いちゃあ」


コタちゃんのスティールから洛山カウンター。

征十郎は黛さんにパスを出すが、その先のパスコースに水戸部さんが付く。

だけど…。


「ならパスはやめた、シュートにしよう」


黛さんはボールを持ち、シュートを放った。

もはや、誠凛に洛山を止めることなどできるわけはないように思えた。