第11章 夏の大三角形なのよ?
うん、わかっていたのよ。
今の彼が、そんなこと覚えているはずなんて絶対にありえないって。
「征十郎…あのね……あの時見た星座は…」
――― 夏の大三角形なのよ?
「…もう一度…あの時の征十郎に、会いたい…」
その場に一人取り残された私の目から一つ、涙が零れ落ちる。
わかってた。
もう昔の彼はここにはいない。
ずっと昔からわかってたことで、受け入れたはずなのに…まだ心が追いつかない。
「(勝負は…決戦、WC)」
もし、ここで彼を元に戻せなければ、私もそれまでだということ。
もうチャンスは巡ってこない。
それでも…私にできることは、洛山だけでなく、マネージャーとしてサポートすること。
「テツ君…お願いします…」
征十郎を、昔のように笑わせてあげて…?
「藍川?いつまでそこにいるんだ?」
顔をあげれば、黛さん。
「…っ、すみません。今行きます」
「……」
涙の零れる目をごしごしを拭き、いつもの笑みを見せた。
黛さんは、何か言いたげではあったが、何も問い詰めてこないのが彼の優しさ。
「(私のことは嫌いになっていいから。その後は姿を消すから…だから)」
もう一度…。