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【刀剣乱舞】 顧恋抄 【短編集/R18含】

第9章 strawberry kiss 【一期一振】






朝早くから、勇ましい剣先のぶつかる音が響いてくる。
湧き出る歓声は、夏の空高くこだまし、中空を渡る鳥の囀りも、彼らを応援するかのように弾んで聞こえる。
ゆっくりと流れる雲が、時の進行を伝えるのみで、ふたりの舞うように美しい剣技は、止まることなく、いつまでも続きそうな気配だ。


「鶯丸殿と美桜様、今日も気持ち良さそうに、いい勝負をしてらっしゃいますね……」


一期一振は、お菓子を両手いっぱいに抱えながら、眩しそうにその様子を眺めていた。

彼らの主である美桜は、最近、運動不足解消の為だといって、数人の刀剣たちに交じって手合わせをしている。
運動不足解消というより、寧ろストレス発散ではないかという声がなくはないが、それでも囲む仲間たちと楽しげに汗を流す主の姿には、自然と惹かれてしまうものがある。

自分もその中に混ざりたい気持ちは山々なのだが、可愛い弟達からの頼みごとを断れる訳も無く、ふたりの舞を横目に、回廊を足早に歩く。

此処の所、なぜか頻繁に頼みごとをしてくる弟達のところに、一期は足繁く通っている毎日が続いている。

ひとつひとつは他愛無い頼みごとだとしても、人数分となると何かと時間を割いてしまうのが現実であった。
手合わせに誘われることは勿論あったが、兄を迎えた際の弟達の喜ぶ顔を見てしまっては、やはりまた彼らの支えになってやりたいと、願う心は自ずから生まれてしまう。


「私も頑張らないといけないな」


一期は、自分自身に強く言い聞かせ、その背中に清々しい朝日を浴びながら、目当ての部屋へと消えていった。










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