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【刀剣乱舞】 顧恋抄 【短編集/R18含】

第6章 ボクのキモチ 【大倶利伽羅】




「……なんだよ。そんなの、当たり前じゃねえか」


宙で一度その動きを止めた指先を、俺は確かな意思を持って動かし想いを伝える。くしゃりと美桜の頭を撫で、その美しい漆黒の髪に軽く唇を落とした。


「ねぇ、大倶利伽羅。もう、お仕事の時間は…… 終わりでしょ、ね……?」


美桜の甘く心地好い声が、ふわりと落ちてくる。
覗き込むように見詰める美桜の瞳が、真っ直ぐに俺を捉えゆるりと揺れ、肩口からさらりと流れる美しい黒髪が、斜めに射し込む夕陽に染まりながら頬を撫で上げ、俺の顔に陰を作っていく。
軽く瞼を閉じて、美桜のもたらす侵食を甘んじて受けるように身を任せる。


「……大倶利伽羅……?」


再度、問いかけるように呼ばれた己が名に軽い眩暈を覚えながらも、その気だるさがとろりと甘過ぎて、理性が麻痺し本能を呼び覚ましていく。


「ちっ、仕方ねえな。ったく」


悪態を、ひとつ。
解ってはいるが、それは些細な餓鬼の反抗という名の意地にそっくりであって。
そんな無駄な抵抗も、照れ隠しには唯一の手段。

そして俺はその問いを肯定するかのように、そっと美桜の身体を引き寄せて、彼女の陽に染まる艶やかな唇を深く深く受け入れていく。




ゆるく閉ざした視界の端では、
茜に輝く空が世界を優しく包み込んだ―――――










「ぷっ…… 大倶利伽羅の顔ったら、真っ赤」

「っ、うるせえな。 ……夕陽の所為だって、ばーか」





やっぱり俺も、まだまだらしい。











END



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