第3章 その指先が描く線 【山姥切国広】
そう柔らかく微笑みながら言う国広の方が、余程泣いているのではないかと思えた。
きっと、彼は自分の表情に気付いていない。
気付かないまま相手の事ばかりを考えて、そして誰よりも深く傷付いていく。
「国……広―――」
「美桜。もう、その指で線を引かないでくれないか………そのように……線を。俺とお前の間に、お願いだから―――」
―――ああ、もう……
伸ばした掌は彼の頬を包み込み、啄ばむ様なキスを与えた。
そして、ちょっとだけ勇気を出して彼の耳元で囁いてみる。
「私の身体も魂も……既に、国広だけのものよ」と。
壊れてしまいそうな彼の笑顔を守りたくて
これ以上、その優しさで彼自身を傷つけて欲しくなくて
私はシーツに指を滑らす代わりに、国広の背中に両の腕を回して、思いっきり彼を抱き締めた。
「……国……広―――」
再度、繰り返す彼の名を。
そして私も、回されたの腕の中で
総てを受け止められながら、抱き締められているような気がした。
だから『今』だけを
あなたの総てを
私の総てを 深く深く刻み込んで
ふと伸ばす 指の先
そこには確かな 彼の温もりが広がっている―――――
END