• テキストサイズ

誰よりも輝いて【黒バス 笠松 幸男】

第8章 想っているから。




「あっちいく〜!」
「スイカーー!」
「はいはい。」


元気な子供と腕を引かれる母親の姿。


町内会の夏祭りでは、毎年見る光景…


その後を、不慣れな下駄でついていく。



【カタン、カタン…】
【カタン、カタン…】



行き交う下駄の音が心地よい。




「はい、ハズレ〜!残念賞だ!」


「なんだよ、ちっちぇ!」



廉がビニール袋に入れて手渡した小さなスイカに、今さっきスイカ割りを外した男の子が文句を言う。




「ねぇ僕?そういうことはね、あそこにいるオジさんに言わなきゃだめだよ?」


廉の困り顔を見て、男の子の顔を覗き込んで、そう言ってあげる。


「うん、わかった!」





「助かったわ、あのガキ態度悪くてさ。」


立ち去る男の子の背中を見ながらそう言って苦笑する廉は、夏祭りなのに、黒Tシャツにベージュの短パン姿だ。



「浴衣着ればいいのに。」



「誰かさんが着付けようとすっからヤダ。」


なんだよ…


やってもらえるんだから、いいじゃんか。



「……そんなことより、笠松先輩は?一緒じゃねぇの…?」







「……………」



「…好きなんじゃねぇーの?めぐみさんよ〜」



「うざい。」



私の肩に腕をまわして、からかってくる廉を睨みつける。




「…俺はいいよ。そのままのめぐみで。」



5歳くらいの女の子に、スイカの入ったビニール袋を手渡し、廉は私を振り返った。



っ…/



普段は見せない、真剣な表情だ。



その後…



「……夏祭り、楽しもうぜ。」



ニコッと笑ったその顔が、



ほんの少しだけ、寂しさをまとっているように感じたのは、



…気のせいだろうか。



/ 59ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp