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モノグラム

第16章 新たな道




 その後、二人は何も話すことなく

その場で離れた

彼は最後の最後まで心配していたが



 家に着いても寝る事は出来なかった


 亡くなった彼を思って....

 彼を思って....







自分の罪は消える事はない

何をしても

彼と幸せなんて望む事は罪なのだ

そう思っていながら

彼を思って胸は熱くなっていたのだ







 次の日に私は花束を持って出かけていた

毎年この日には必ず

ある場所に出かけていた



電車に揺られながら考えていた

彼との思い出を


親友が好きだったのも知っていた

でも、彼は私を愛してくれた

今も忘れてない

照れ臭そうに言ってくれた彼の顔


今では夢かと思ってしまう日々だが

私と彼が過ごした時間は

いつも幸せだった

ずっと笑っていた

そんな時間がずっと続くと信じていた






 彼のお墓の前に私は立っていた




『私は幸せになってもいいのかなぁ?』


彼に問いかけてみた

冷たい墓石は天気の空を映していた

花をそっと置いて手を合わす


その時に私は人の気配を感じて

後ろに振り向いた


「今年も来てくれたんだね....」


優しそうに微笑みながら立っていたのは

彼のお姉さんだった


「お久しぶりです....」


私は静かに頭を下げた


「ありがとう....

あの子の誕生日を覚えてくれてて

親は辛いからって....

私だけ会いに来たの」


「.......」


お姉さんは私の傍に静かに立つと

持っていた花束をお墓に供え

静かに手を合わせた



祈り終わると

お姉さんは静かに言った


「もう、弟の事は忘れて....」


私は、何も言わずにお姉さんを見た


「貴女は生きているの

もう幸せにならなきゃ....」


その言葉に私は首を振って答えた




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