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白龍皇子の従者は薙刀トリップ少女

第3章 煌帝国


槍を振るい終えて動作を止める。
あんなにも辛かったのが嘘だったかのように今は晴れ晴れとした気持ちだった。
一息ついて額に滲んだ汗を腕で拭うと、そこで白龍さんに見られていた事を思い出す。

「あ、えっと……」

勝手に槍を使ってしまったし、鍛錬の邪魔もしてしまった。
これは……怒られるだろうか?

そう考えて、恐る恐る白龍さんの方を向くと――

予想に反して、キラキラとした眼差しで見つめる姿があった。

「瑠花殿! 凄いです! 先の槍使い見事でした……!」

感動したと、そう言わんばかりの勢いで白龍さんは熱演してくる。

「え、そんな事は……」

後ずさりながら言うけど、勢いづいた白龍さんはどんどん迫ってきて――

ガバッ

と、勢いよく私の手を握ると真剣な様子で言ってきた。

「俺の、従者になってくれませんか?」

……従者?
咄嗟に理解ができず、言葉に詰まる。
それを白龍さんはNOと受け取ったのか、必死な様子で――

「確かに俺は未熟で頼りないかもしれませんが、それでも瑠花殿に従者になってほしいんです!」

言葉と痛いくらいに握られた手が真剣さを物語っていて……。
従者がどういったものなのか理解する前に私は返事をしてしまった。

「私でいいのなら……」

遠慮がちにそう伝えると、白龍さんはパアッと表情を明るくして。

「有難うございます!!」

と嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
笑顔があまりに無邪気でドクンと、心臓が跳ねた気がした。

「あ、あの……そろそろ離してもらえると……」

跳ねる鼓動を誤魔化す様にそう言うと、笑顔から一転、顔を紅く染めながら白龍さんは手をバッと離して、

「す、すみませんっ!」

と謝るのだった。

―――――

その後、物陰から一部始終を見ていたらしい白瑛さんがやってきて。
私が白龍さんの従者となる事を喜んで下さったのだった。

そんな事があって、私は今自室にいる。
と言っても槍を振るう前に使わせてもらっていた部屋なんだけど。
何となくベットに倒れこむ。

「色々あったなぁ……」

死のうとしたら、異世界に落っこちて、そこで白龍さんに助けられて。
それで今度は従者か……。

「でも、槍を振るってるときの白龍さんカッコよかったな」

きっと真面目で誠実な人なんだと思う。
今日一日一緒にいただけだけど……それは分かった。
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