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シャングリラ  【サイコパスR18】

第10章 天然


「サンキュー!……ねぇ、悠里ちゃん、俺もとっつぁんから、美味しいコーヒー貰ったんだけど、時間あるなら、一緒に……どう?」
 ほんの少し遠慮がちに紡がれた言葉。
「いいの?じゃあ、お邪魔します!」
 願ってもみないお誘い。別に何をするわけでもなくても、こうして秀星くんのテリトリーに入れてもらえることが、とても嬉しくて、ついついテンションが上がってしまう。秀星くんも同じ気持ちだったらもっと嬉しいけど、それはちょっと望みすぎかな。あぁ、でも、何も思ってない相手に、……キスしようとなんて思わない、だろう、し?あー、でも、分かんないな。それは、私がそうであってほしいから、そう解釈したいだけかもしれないし……。でも、こんなこと、本人に尋ねられないし。

一昨日のように、ソファに腰かける。しばらくすると、秀星くんがマグカップを2つと、チョコレートの載ったお皿を持ってきてくれた。トレーには、ミルクとシュガーもきちんと載っていた。
「わ、いい匂い……!これ、本当にコーヒー?」
 コーヒーにしては香りが強い。
「フレーバー、入れ過ぎじゃないの?」
「いやいや、悠里ちゃん。これ、本物の豆が入ってるらしいよ。だから、香りが違うっしょ?とっつぁんが言うには、「本物のコーヒー」なんだって。本来は、原料のコーヒー豆を挽いて作るらしいんだけど、それには専用の道具が必要らしくてさ。あと、コーヒー豆にも種類や何かがあって、それぞれ香りも味も違うらしいよ。これは、とっつぁんのお勧めで、チョコレートに合うコーヒーなんだって。」
「へぇ~……」
 言いながら秀星くんは私の向かいの椅子に腰かけ、マグカップに砂糖とミルクを投入。「香りが違うっしょ?」と言った割には、そのコーヒーを一口も飲まずして砂糖とミルクを多めに投入した秀星くん。……実は、コーヒーはそう得意でないのかもしれない。お菓子を作っていたところや、チョコレートで喜ぶ辺りを考えると、もしかしたら甘党なのかもしれない。でも、これも口に出してしまって、本人が喜ぶかどうか分からないので、心にとどめておくだけにする。
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