第4章 松川一静の観察

『いきなりだけど、今日夕方、白鳥沢と東北大学で練習試合やんだって。市民体育館でやるから誰でも見れるらしいんだけど、行かねぇ？』

グループLINEで送ると、

『OK』

『了解』

『マジ？　行く行く』

昼休みだからか、即レスが来た。

……が、

『悪い、用事あるからパス』

やっぱり。

だと思った。

最近、岩泉はつき合いが悪い。

誘っても５０％は断られる。

なんとなくその理由を感じているみんなはあえて突っ込まないが……

『え～、なんでさ！？』

約一名、空気を読まない男がいる。

最近、某事件？から「ハンガー徹」と呼ばれ始めて勝手に一人喜んでいるヤツ、及川だ。

『だから用事あるってんだろ』

『なに、その用事って』

『ちょっと』

『ちょっとって何』

『なんでてめぇに言わなきゃなんねぇんだよ』

『だって岩ちゃんと俺の仲じゃん』

『どんな仲だ』

『普通行くでしょ、ウシワカちゃん見れるんだよ！』

『だから用事があんだって』

『そんなのいつでもできるじゃん』

『できねぇ』

『岩ちゃん、バレーと用事とどっちが大事なのさ！？』

夫婦喧嘩か……？？？

画面を眺めながらおにぎりを食べてると、

「夫婦喧嘩みてぇ」

横にいつのまにか花巻がいた。

隣のクラスだからか、花巻は昼が終わるとふらりとうちの教室にやってきたりする。

「グループLINEで喧嘩すんなっつうの」

「でも最近岩泉、付き合い悪くねぇ？」

「だから彼女でもできたんじゃないの？」

花巻は最初から「彼女説」を唱えている。

「うちの学校で？」

「だろ。だって他で知り合う機会ねぇじゃん」

月曜日を除いて毎日練習があるから、遊びにいく時間もない。

及川みたいにどこに行っても女に囲まれるタイプなら出会いもあるけど、岩泉は性格がストイックで及川みたいなチャラさはない。

女に囲まれても愛想よくできないのは、これまで練習試合なんかで他校に行ったときの岩泉の態度からみんな知ってる。

そっけない。つれない。そんな男だ。

「『俺、不器用っすから』みたいな岩泉が女と出会うって、もう校内しかないだろ」

「じゃあ誰？」

素直な疑問を投げかけると、

「そんなの俺が知るかよ。岩泉のことだから、言わないってなったら絶対言わないだろうし」

花巻は肩を竦める。