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【ハイキュー‼︎】【オムニバス】 岩泉一の恋愛事情

第6章 及川徹の観察



岩ちゃんが最近おかしい。

いや、前からおかしかったけど、そういう「おかしい」じゃない。

練習中、スパイクを決めた岩ちゃんの肩口に、赤い痕があった。

首と肩の境目あたり。

蚊? いやいや、大きすぎるし。

梅干しぐらいのうっ血したような痕。

「岩ちゃん、なんか首のところについてるけど」

「あ?」

「ほら、ここ」

ぐいっとユニフォームの襟を引っ張る。

「って、引っ張んじゃねえっ!」

「なんかそれさぁ……」

「なんでもねぇよ! つか、無駄口叩いてないでさっさとトスあげろ!」

あれ、なんかマジ怒り?

トスがあがるのを待ってるまっきーが何か言いたそうな顔でこっちを見てる。

(なに?)

目くばせで訊くと、

(バカ、その話題には触れるな)

視線で諭された。

なにそれ。

そんなこと言われたら、よけい聞きたくなるじゃん。

「ね、岩ちゃんさぁ……」

「クソ川っ、練習時間にムダ口叩いてんじゃねえ!」

もう一発怒鳴った岩ちゃんが、肩口で額の汗を拭いた。

(あ!)

ぐっと伸びた襟から見えたのは、赤く細い傷あと。

鎖骨の下に、ミミズ腫れ。

……ネコ?

いやいやいや……

えええええええええ!!!

これってもしかして……キスマーク???

引っ掻かれた痕?

いやいや、ないない。ないし。

岩ちゃんにそんなこと、あるわけない!

でも……

俺に黙って、彼女とかできてたりして……

「ちょっと岩ちゃん!」

夫の不倫を発見した奥さんみたいに詰め寄る。

「ちょっと岩ちゃん、彼女とかいないよね!?」

「はぁ? なんだいきなり」

「だってさ、」

「てめ、くだらねぇこと言ってると張っ倒すぞ!」

ちっと舌うちする岩ちゃんは、機嫌が悪そう。

でも、これは図星だからだ。

長年の親友、岩泉一の態度はわかりにくそうでわかりやすい。

(やっば、ビンゴじゃん)

だよね?と、まっきーを見ると、

(だからつつくなって)

(えー、だって)

(とりあえず今はそっとしとけって)

松川とまっきー、4つの眠そうな瞳がじっとこっちを見てる。
「……なんなんだよ、岩ちゃん!」

持ってたボールをボンと岩ちゃんの背中にぶつけると、

「あぁ!? それはこっちのセリフだっ、ボゲッ!!!」

意味もなく、怒られた。

やっぱり、岩ちゃん、おかしいし……


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