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【ハイキュー‼︎】【オムニバス】 岩泉一の恋愛事情

第5章 愛される……



青葉城西が独自に出してる参考書。

2年の時のヤツ、もう使わないからやる。

そう言われて、待ち合わせした。

「部活が終わったらメールするから」

メールが来た時にはすっかり日が暮れてた。

『悪い、今から速効出る』

学校で待ち合わせはしない。

学校の友達には知られたくないみたい。

なんでかは、教えてくれない。

参考書をもらって途中まで一緒に帰ろうとしたら大雨が降ってきた。

「とりあえずうちまで行くぞ」

「え……でも」

「うちの方が近い」

前を走るはじめくんを追う。

いきなり前が霞むぐらいの土砂降り。

目があけてられない。

「おい、手」

「……っ!」

手首を掴まれて、引っ張られながら、走る。

転ばないように足元を注意してくれてるのがわかる。

「は、はじめくん、ごめん……」

「あ?」

「私、走るの遅いから……」

「何言ってんだ」

ぶっきらぼうな言い方。

でも何度も振り返ってくれる。

気にしてくれてる。

はじめくんの家に着いた時には全身びっしょりだった。

昔から変わらない、日本家屋の大きな家。

借りたタオルでさっと全身を拭いてから、靴下を脱いで居間へあがらせてもらう。

「ちょっと待ってろ。着替え持ってくる」

「気にしないで。止んだらすぐ帰るから」

「バカっ、だめだ、風邪ひくだろ」

「でも、……」

「今日誰もいないから、遠慮すんな」

「おばさん出かけてるの?」

はじめくんのお母さんは専業主婦だ。

おっとりとしてて優しくて、いつも和装してる。

「親父もおふくろも姉貴もおふくろの実家行ってて今日は帰ってこない……ってとにかくいいから、とりあえずこの前にいろ」

電気ストーブの前に立たされる。

つけるとホワンとすぐに足元が温かくなる。

宮城の梅雨時期はまだ寒い日も多い。

東京とはやっぱり違う。

2階へ駆け上がる足音を聞きながら、部屋を見回すと、縁側のむこうに目を奪われた。

灯篭に灯りがともってる。

暗闇のなかで、ぼっと照らされた日本庭園。

その中で、あじさいがたくさん咲いてる。

きれい。

雨音だけがする夜の空間は、静かで……

いつの間にかはじめちゃんが後ろにいた。

「……」

「……」

サーッと雨の音だけがする。

真後ろにいる。

近い。

体温が感じられるぐらい、近く……


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