• テキストサイズ

愛されたい症候群。

第10章 まるで歌うような弾んだ声




忘れたわけじゃなかった
どうでもよかったわけでもなかった

言った方は忘れるけど
言われた方は一生覚えている、なんて
昔よく両親や教師に言われたが

自分はそんなことない
反省だってしたし、思い出せば
今だって後ろめたい気持ちになる



だからだろう
何故か許されていると思い込んでいて

話しかける権利すら無いなんて
考えもしなかった





偶然に会った中学の頃の後輩
霜月 慶
同じ部活のマネージャーだった彼女は
宍戸の勧めで入部してきた

特別優秀というわけではなかったが
真面目で一生懸命に動く姿が印象的で

「霜月はええ子やな」

そんな言葉を本人にかけたりするくらい
俺は良いイメージを持っていた


だから彼女…霜月が
姉であるりおなに嫌がらせをしていると
初めて聞いた時

裏切られたような失望感が生まれ
それはすぐに怒りへ変わった


姉の成功を妬み、傷つける妹

お前はそんな奴だったのか
いままで俺たちを騙していたのか


そんなことしか頭にはなくて
俺の中で今起きているであろうことが全てで
現実で絶対だった

霜月を信じようだとか
彼女がそんなことをするわけがないなんて
微塵も思わずに


俺は霜月に敵意を向けた
否、俺を含めた全員が

だれも嫌悪感を隠そうとしなかった


顔を見れば嫌な顔をして
傷つけることを承知で
彼女の存在を否定するような発言も


結果、霜月は部活を辞めた
最後の大会前日に


…違う、辞めたんじゃない
俺たちが辞めさせたんだ

気づいてはいたけれど
都合の悪いことは全部無視した


「最初からお前なんか
おらんけりゃ良かったんや。
誰にも必要とされてなかったんやし」


学校でたまたま見かけた霜月の
肩を掴み、怖がる彼女に
そう吐き捨てたことを覚えてる



辞めたのはきっと
もう傷つきたくないと思った彼女が
選んだ道だったんだろう

わざわざそれを捕まえて
…自分は何がしたかったんだ



顔も見たくなかったのに
逃げた、ということに腹をたてたのか
自分たちがその選択をさせたのに

なんとも自分勝手だ
頭が痛い、吐き気がする







/ 65ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp