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きつねのき。

第1章 むかしばなし。



 その傷がついたのは、4歳の頃だ。

 妹を産むために入院していた母さんの代わりに、あたしの面倒を見てくれたのはおじいちゃんとおばあちゃんだった。
 二人の家は、都心に住んでたあたしたちの家から遠い山の中にあった。
 最初は母さんが恋しくてよく泣いたけど、そのうち友達がたくさんできて寂しくなくなった。

 友達といっても、そんな山の中に仲良しになれる同い年の子がいたわけじゃない。
 仲良くなったのは、おじいちゃんが飼っていた犬のチロとか、庭の鳥小屋にいるニワトリたちとか、たまに庭に出てくる毒のない蛇とかだった。
 ちょうちょやアリ、カエルを触れるようになったのもそのときだ。おじいちゃんとおばあちゃんが畑仕事をしている間、あたしはふたりの傍で他のいきものたちと遊んでいた。
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