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あなたの好きをまだ知らない。

第8章 冬日


季節が巡るのは早く、肌寒いと言うより凍えそうな気温だった。
冬なのだから、もちろん雪も降る。その度美寿子は雪だるまを作っている。

「なぁ、今日はどんなの作るんだ?」

「んーかわいいのがいいかなって。」

「何でかわいいのなんだよ。」
「だってさ、美寿子のお父さんもお母さんもすっごく優しいからさ。」

「変人の間違いだろ…」

美寿子の作るのを見ていると、母さんが庭からリビングに繋がる窓を開けた。

「美寿子ちゃん、体冷やすわよ?大丈夫?」

「はい、気にしないでください。」

「大丈夫だよ。美寿子は俺が見てるから、寒そうだったら直ぐに部屋に入れるから。」

そう言うと、母さんは部屋に戻っていった。

「今思ったんだけどさ、何でいつも雪だるまなんだ?」

「…内緒だよ!!」

雪は深々と積もっていった。

.......

父さんと母さんに美寿子の事を話したのはつい先週の事である。
二人とも驚いたように笑っていたのを覚えている。
それから母さんはいつも美寿子の事を聞いてくるから、今日呼んだわけだ。

「しかし…美寿子ちゃんは良い子ね。」
「あぁ…すんげぇ優しいよ…」

美寿子はいつでも優しかった。
苦しいとき、いつも美寿子がいてくれた。

「あいつがいなかったら…今でも一人のまんまだろうな…」

「良かったわね、冴杜。私たちがいなくても、あなたは生きていけるのね…」

「もうやめようよ。
俺はもう怒ってないんだから、母さんは気にすんなよ。」

美寿子を自室に上げて、俺は母さんと会話をしていた。

「さっ、早く美寿子ちゃんの所に行ってあげなさい?待ってるんでしょ?」

「…あぁ、分かった。」

母さんはそう言って笑っていた。

「美寿子ー待たせたな。」

「うんうん、大丈夫だよ。それよりさ、これ、やっても良い?」

美寿子は手に耳掻きを持っていた。

「耳掻き…か?」

「うんうん、こう見えて私耳掻き得意なんだよ?」

半強制的に俺は美寿子の膝枕を受けていた。

「じゃあ、早速やってくからね。」

「お、おう…」

耳掻きはそんなに頻繁にやらないから、少し緊張している。

「ふ~ん…やっぱりお母さんのと違うんだね。」

「そりゃ、ちが…うっ…」
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