第4章 夏晴
さて、今私は究極の状況下にあった。
私の隣に冴杜が座っていて、目の前に私のお母さん、皐月早奈英が座っている。
もうかれこれ1時間は過ぎただろう。
「あの~お母さん?」
「何?」
不思議な笑顔が怖い。
元はと言えば、冴杜が私を変に連れ回したから、帰りが遅くなり、お母さんに見つかってしまったのだから、冴杜に言って欲しい。
「柊冴杜君、よね?」
「は、はい…」
「家の美寿子がお世話になってます。」
「いえ、こちらこそ…」
「それで?美寿子とはどうゆう御関係で?」
「ちょっ!!お母さん!!///」
今日が勝負だったのに…
心の片隅でそんなことを思いながら、冴杜が次に言う言葉を待った。
「…俺は…美寿子さんの…彼氏をさせていただいてます!!」
……………へ?
「へぇ、彼氏ねぇ…じゃあ、美寿子の過去の事も引っくるめて付き合ってくれてんでしょうね。」
体が瞬時に硬直した。
まさかお母さんから切り出してくるとは思わず、あの時の記憶が走馬灯のように駆け抜けていく。
「…聞いてません。」
「…じゃあ、あなたは美寿子に認めてもらえな…」
「でも、前の美寿子がどうであれ、俺は今の美寿子も!前の美寿子も!どっちも美寿子なんだ!俺も、過去に嫌な事が沢山あります。でも!!今の俺があるのは、今の美寿子があるのは、
過去の俺たちがいたからなんです!!」
涙で滲んでいた視界はすぐに晴れ、冴杜を見つめた。
「何があったかは知りません。でも、“何かがあった”事は知ってます。
そんな彼女を俺は好きなんです!!」
広いはずのリビングが、冴杜の声が反響して、狭い空間だと錯覚してしまっている。
「はぁ、どうやら心配して損したらしいわね。
美寿子、こんなにいい人は滅多にいないわよ。手放したら、あんた結婚できないからね!」
「け、結婚んん!?」
「んじゃ、冴杜君、ゆっくりしてってね。」
お母さんはそう言うとまた仕事に出掛けてしまった。