第8章 誰の顔も浮かんでこないわ

征十郎とテツ君には先にあげていたのでとばし、最後に修ちゃんに渡す。


「なんか悪りぃな」

「何言ってるんですか。主将には一番お世話になってるんですからあげるのが当然です！」

「そうよ。というより私は毎年あげてるじゃない」


私がそういうと、掌の上に乗ったチョコをまじまじと見ていた先輩方が全員こちらを見た。


「そっかー。虹村は藍川と従兄妹だったんだー！」

「くっそ、毎年貰ってたのかよ」


と口々に言う。

モテない男たちの痛々しい叫びだった。

ふと、紙袋の中を見て、何故か一つ余っていることに気づく。

バスケ部用に部員分＋あっくんのおまけで数はきっちり合わせてきたはずなので余るわけがない。寝不足で数え間違えてしまったのか。

だが、さっちゃんの方も「あれ？一つ余っちゃった」と呟いていた。


「灰崎の分だろ」


あぁ、確かに今日の朝練は祥ちゃんが来ていなかった。

最近、彼は朝練をサボることが多い。

後で校内で会ったときにでも渡すか、と思ったところで、今日の朝練は終わった。