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青春あやまち論 【黒子のバスケ】

第4章 深く考えるのは止そう



ゴールデンウィークが始まった。

先輩マネージャーに指名された私は、一軍とともに長時間バスに揺られ、学校から遠く離れた地にやってきていた。


「流石に5時間バスは体に応えますね」

「そうね。来年は新幹線か飛行機で、って監督にお願いしたら?」

「そうします」


バスを降り、背伸びをしながら先輩マネージャーのエリカさんとそんな会話をしていると、私たちの会話が聞こえたらしい修ちゃんの肩がピクッと反応したのが見えた。

修ちゃん、飛行機苦手だものね。

私がクスッと笑うと、エリカさんは「どうしたの?」と首を傾げた。


「なんでもありません」

「そう、じゃあ早速始めましょうか」


部員が着替えに行っている間、エリカさんと私はドリンクやタオルの準備、テーピングやボールのチェックをお互いに仕事を分担して始めた。

修ちゃんと従兄妹なうえに、入部早々に一軍を優先的に担当することになった私は、正直先輩マネージャーの目が痛かった。だが、エリカさんは他の人たちとは違って凄く優しいし、私に誰よりも仕事のできるマネージャーになって欲しい、と色んなことを沢山教えてくれる。


「華澄ちゃん、今日は交代でスコアを書きましょう」

「いいんですか?私まだエリカさんみたいに書けませんよ?」

「何事も経験からよ。私も隣で見てるから」

「はい」


こんな素敵な人が先輩で良かったな。


「おい、これ持ってろ」


こんな風に汗臭い使用済のタオルを乙女の顔面に投げつけるような人は死んでも先輩だなんて呼びたくないけど。

「虹村、可哀想でしょ」

「こいつはいいんですよ」


いいわけないでしょ。
『虹村先輩』って呼ばせたがるくせに、私をまるっきり妹扱いするのはどこのどいつよ、全く。


「華澄、悪いが持っててくれないか」


征十郎が私にタオルを渡してくる。

そうよ、これよこれ。


「修ちゃんも少しは征十郎を見習ったら?」

「あ゛あ゛?!」


相当嫌だったのか、凄い形相で私を睨む修ちゃんの顔が面白くて、エリカさんと私は顔を見合わせて笑う。
でも確かに、修ちゃんが今更征十郎みたいな態度をとったらそれはそれで…。


「気持ち悪いかも」

「声に出てるぞ」

「あ」


征十郎に言われ思わず口を押える私に、修ちゃんはいつもの強烈デコピンをかました。

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