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短編集《 黒子のバスケ 》

第1章 我慢は体にも頭にも良くないよ/紫原敦


「オレこのトロピカルバナナのミルフィーユクレープ〜」
「わっ、いくねー。じゃあ私は贅沢ストロベリークレープにしよっと」
「ちんも中々〜」



あれからすっかり元気を取り戻した紫原はウキウキしている。
そしてもまた、悪戯っ子のように無邪気に笑っている。
は自分が食べたいからと言いつつ、ここまで頑張ってきた紫原にご褒美として連れてきたのだ。
案の定喜ぶ紫原にはニッコリだ。



「ちょっとだけ、ちょっとだけ…これはちんの為…」



そうブツブツ呟く紫原に、は必死に笑をこらえる。
一見微笑ましい姿だが、赤司にバレるとどうなることか。
恐らくバレないというのは難しいだろうが。



「…これ食べたらまた明日から頑張れる…」
「敦君、順番来たよ」
「はっ!!」



しかしそんなことを考えている場合ではない。
…紫原にとっては。
久しぶりの甘いもので気分は最高潮だ。



「ふあ〜〜!!」
「おいし?」
「うん!すんっごいうまい!ちん食べる?」
「じゃあ一口…ん」
「うまいでしょ?」
「うん!ありがとー。私のもどーぞ」
「言ってくれるの待ってた〜」



そう言ってまるでカップルのようなやり取りをしている。

それから紫原ももペロリと完食し、談笑していた。
紫原は久しぶりというのもあってか幸福感で満たされているようで、ほっぺたが落ちそうな表情をしている。



「内緒、だね」
「うん、内緒。私達2人だけの秘密」
「でも赤ちんならバレそう」
「大丈夫。私がいるから」
「おー、ちんカッケー」
「ふふ、まあね?」



じゃあ明日からまた頑張ろう、そう言って微笑むに、紫原は少し頬を赤らめた。
余裕だしーといつもの調子で答える紫原にまた、は嬉しそうに笑った。

しかしやはり、赤司にバレずに過ごすのは難しいらしい。
どういうワケか、赤司は2人がクレープを食べている所を目撃していたのだ。
初めは怒られたが、の完璧なフォローにより、特別メニューは免れた。

そしてキセキの世代と呼ばれる彼らは皆、こう思う。


『赤司の次に敵にしちゃいけないのはだ』


と。



「ちん大好き〜」


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