第6章 菅原孝支 『ウソつき』
『女の子って何を考えてるのかよく分からない。』
そんな事をいきなり言うから、
そりゃあ聞いちゃうよ。
「孝支…好きな子でも出来たの?」
半ば祈るような想いで返事を待ってたら、
少し、はにかみながら
まぁね。って
あたし…間抜けな事になってるね。
ずっと隣で見てきたから
孝支の1番の理解者のつもりになってて。
1番の理解者=恋人
にはならないって。なってみて初めて分かった。
動揺を隠すために、
色々聞いた。
どんな人なのか?
歳はいくつなのか?
どんな所を好きになったのか。
孝支が嬉しそうに話すから、
内容が全然入って来ないよ。
「これ言ったのお前が初めてなんだ。
やっぱりすいれんに話してよかった」
嬉しいけど…
すごく悲しい。
言う前に失恋って…神様そりゃないよ…。
帰って、布団にもぐりこんで
声を押し殺して思いきり泣いた
泣いて泣いて…目覚めたら
「実は夢でした!」
とか明るく笑って
あたしの前に立っててくれないかな。
なんてね。
バカな事言っちゃった。
あたしは1番の理解者なんだから
しっかり幸せを願ってあげなくちゃ。
だから最後にウソついて
気持ちにさよならするって決めた。
孝支の携帯に電話をした。
「もしもし…すいれん?どしたー?
鼻声だけど風邪引いちゃった…?」
相変わらず変化にすぐに気付いてくれるね。
「あたし…
孝支の事好きだよ。
でも勘違いしないで!人としての好きだから!
仕方ないから応援してあげるから!
頑張りなよ!じゃあ切るね!」
これ以上話したら泣きそうで
一方的に電話を切った。
こんなに近くに居るのに。
気持ちの上では1番遠い人。
いつか電話で言った気持ちが100%本当になればいいな。
あたしの泣き虫が治ればいいな。
まだしばらくはウソつきなあたしを許して。
END