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FFⅨ Hi Betty! (Short)

第5章 バニーガールと秘密の夜会 #2


-シェリー、随分と長いことお楽しみのようじゃないか。

よく聞き覚えのある声だった。
私は観客席の方に目を向け、さらりと全体を見渡したが声の主は見つからなかった。
彼がこの手を使ってくるということは、私の居場所は分かっているのだろう。
この先の流れを想像するのは容易かった。
まず、門限を過ぎた理由について問い詰められ、たっぷりと嫌味を言われ、最終的に、しばらくの間は片時も側を離れることを許されないのだ。
本人は絶対に認めないが、結局のところ私がいないと寂しいのだろう。
今回はナイト家の屋敷なんかに居座っているのだから、余計にこってりと絞り上げられそうだった。

-なんで、こんなことに巻き込まれているのかは後で聞くとして、あと十五分、しっかり持ちこたえることだね。まぁ、いざとなったら助けてあげるよ。こんなところで、僕の可愛い子うさぎをくたばらせるわけにはいかないからね。
-ちょっと待って…!なんで知って…
-ほら、前を見なよ。

チェーンメイルの塊が向かってくるのを咄嗟に股下をすり抜ける形で切り抜けた。
この魔物は体のわりに俊敏ではあるが、速さでは当然ながら私の方が優っている。
なので、ある程度好きな場所に攻撃を当てに行くことはさほど難しいことではない。
しかし、攻撃を当てることができたところで精密に編まれた鎖をなかなか突き破ることができなかった。
まず、私の選んだこの曲刀は細身でリーチはあるが、片刃で重みはあまりない。
斬りつける攻撃ではチェーンメイルを引き裂くことが難しかった。
この巨体でなければ、打撃を与えることくらいはできたというのに。
よって突きをうまく繰り出して、網目を徐々に壊していくといった方法をとるしかないのだが、今度はこの曲刀の方が心許なかった。
下手にチェーンに巻き取られ、向きが悪ければ刃が砕けかねない。
必要以上に当たりに気を遣わなければならなかった。
この剣がなくなってしまえば、私に勝算はないのだ。
憎らしいことに、縛りとして魔法捨てたのは失敗だったと言わざるを得なかった。
私はこうして相手と選択の時点でかなり不利な立場に立たされているわけだ。

-…十五分もあれば充分よ。
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