第2章 夢のような夜伽 #2
「やっぱり、私とじゃ駄目ですっ…」
白いシーツに花開くかのように、はだけたドレスが肌を滑り落ちた。クジャ様は私の覚束ない制止など気にも留めず、コルセットを紐解いていく。
「まだ言うのかい?僕のことしか考えるなって言ったはずだよ。」
弛められたコルセットは放られ、また一つと寝台を彩る。露になった乳房は骨の浮き出た綺麗な手に収まり、その柔らかな質感は彼に委ねられた。私については、胸の鼓動がいっそう小刻みになったのを彼に悟られまいと、平静を装い、呼吸を整えていた。
「でも…」
「嫌だっていうなら、止めてあげてもいいけれど…?」
聞かなくともわかっているだろうに。クジャ様は意地悪に細めた瞳で私を見つめながら胸元に唇を這わせた。
私はただ嫌じゃないと首を振った。
「なら、大人しくいただかれることだね。」
彼は粗野に吐き捨てると、言葉とは対照的な手つきで手の中にある胸の膨らみを撫で上げ、片方の突起を口に含んだ。
「っ……」
喉の奥から跳ね上がるように、吐息が漏れた。既に身体がおかしくなり始めていた。彼の舌先が突起を弄び、もう片方の胸が形を変える程、上手にものを考えられなくなっていく。冷静にただ早く終わることだけを考えていたいつもの行為とは全くもって感覚が違かった。
「シェリー、君もそういう表情をするんだね。」
クジャ様は私の頬を包み込み自分の方を向かせると、今にもそのつんとした顎先が触れてしまいそうな距離で私の目を覗き込んだ。普段から涼しげで冷たささえも感じさせる彼の瞳は淡い照明のせいもあってか、より一層艶が増して見えた。
「そんなにまじまじと見ないでください…」
「視線を奪って離さないのは誰だい?」
語尾こそ疑問形ではあるが、クジャ様は答えなど端から聞くつもりはなかったのだろう。そのまま私の唇にほんのりと濡れた色素の薄い唇が重ねられた。絡みつく彼の舌先に弄ばれている間にも、骨張った手が腰に纏わり付いた丈の短いスカートの裾を捲し上げ、抜かりなく太股を這うので、布地の上から抑えつけた。反射的な行動だった。
「…クジャ様とだと何かが違うんです。……今まではこんな風に思ったことがないから……、だから、……少し怖いです。」
「それは僕に大好きだって言ってるのかい?」
「そういうことじゃ…!」