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FFⅨ Hi Betty! (R18)

第1章 夢のような夜伽 #1


客室を前に私は躊躇していた。
城では、ダリに作られることになった黒魔導士の製造工場の件で連日のように話し合いが行われており、ブラネ様の勧めによってクジャ様はしばらく城に宿泊することになっている。私がいるのは、クジャ様が使用している部屋の前だった。
いつものように、ただ扉をノックすればいいだけだというのに、なかなか手を動かせずにいた。ブラネ様から命じられたある仕事が原因だった。
しかしながら、そう長い間ここに居座っているわけにもいかず、私は意を決して彫刻が施された木製の扉を叩いた。

「クジャ様、その…」
「話はブラネから聞いているさ。」
「…それなら、助かります。」

クジャ様は扉を開くなり、すぐに私を迎え入れた。私から全てを説明する必要がなかったことについてはありがたかったが、できることなら彼にはこう言った話を持ちかけないで欲しかったというのが本音のところだった。

「今日が初めてじゃないんだろう?」

私は頷いた。なんと切り出したらいいのかわからず、彼を直視できずにいると、クジャ様は大きく溜息をついた。

「意にそぐわなければ、突き返してください。仰る通り、これが初めてではありませんし、ブラネ様の命であれば私は何度だって…」
「泣きそうな顔で言う言葉じゃないね。」

最後まで言い切る前に、クジャ様は私の身体を抱き寄せた。どうして彼がこんな行動をとるのかはわからなかったが、そうされるだけで更に目元が熱を持っいる事実だった。拒絶されるかもしれない。そんな不安で胸の内がいっぱいだったのだ。安心している反面、客観的な私は不純物の混ざった表皮に綺麗な白い手を触れさせないで欲しいと、心のどこかで必死に声をあげてもいた。

「シェリー、紅茶を淹れてくれないかい?」
「紅茶、ですか…?」

そんなことなど知らず、クジャ様は目を合わせることのできない私の頭をゆっくりと撫でる。

「そう。行けるかい?」
「…はい。」

思いもよらない注文に戸惑うが、すぐに承諾した。こういった仕事では、いつもの給仕らしい給仕はしないのだ。私はテーブルに置かれた他の誰かが持ってきたのであろう、ティーカップを持って部屋を出た。カップの中身は手がつけられた気配がなかった。
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