第2章 紳士君、大誤算。
~孔明side~
どうやら天音は向こうへ行ったみたいだ。
何やら普段よりぼうっとしていたみたいだったが
俺には良く分からなかった。
少し時間を置いて、すぐには戻ってこないのを確認すると見えないところに隠しておいた小瓶を取る。
錠剤タイプの小さなそれを数粒手にとって
開けておいた天音が使うコップに入れた。
副作用も無いはずで、効果もそんなたいしたものじゃ無いらしい。
案外あっさりと終わってしまった事に俺は少しつまらなさを覚えたが、あのツンツンが果たしてどんな反応をするのか考えると、楽しくてしょうがなかった。
そうこうしている内に天音がもどってきた。
両手には焼きうどんの乗った皿と二人分の箸。
少し危なっかしかったが、ちゃんと俺の頭にぶちまける事無くそれはテーブルに置かれた。
「上手く出来たかわかんないけどどうぞー。」
「上手くできてなくててもいっつも美味しいから。いただきますー。」
麺を啜りながら他愛もない会話をする。
下らない冗談にころころと子供みたいに笑う天音はどうしようも無いほど愛しい。
恐らく俺と二人で居るときだけに、たまに見せてくれるその楽しそうな顔が可愛らしくて、いじらしくて。
ふと、天音の近くにおいてあるコップが目に映る。
俺の感覚が間違っていなければそれは、最初注いだときより水位が下がっていて、少なくとも一度は天音が口につけたことを表していた。
・・・ということは。
と、その時。
天音の体が一瞬ぐらりと揺れたかと思うと、俺は後ろに倒れていた。