第4章 障害と傷害
『ああ、そうだったわね。ごめん。』
『全然大丈夫っす。』
『それならよかった。でね、裕太のことなんだけど、少しいい?』
『裕太って、誰ですか?』
『光の席の隣の、傷がいっぱいある子よ』
『ああ、あいつか』
『そう。その子とね、友達になってほしいの』
『え?俺がですか?』
『そうよ。あの子ね…あなたと似てるんだけど、友達がいないのよ』
『そうなんですか…』
『そう。おまけに、お母さんに愛されてないのよ。』
『どういうことですか?』
『実は、去年、あの子が1週間学校を休んだの。心配に思って、あの子の家に訪問したらね、あの子、うずくまって泣いてた。』
『??あいつが?』
『そう。なぜか分からなかったけど、泣いてたの。それで、私が、「お母さんは?」って聞くと、ふるふる首を横に振って、答えなかった。』
『何か、お母さんとトラブルでもあったのですか?』
『あのこ、多分お母さんに虐待されてる。愛情が欠けてる。』
『そうなんですか…』
『それで、この前児童相談所を紹介したの。児童相談所は、たくさんの証拠を見つけた。』
『…例えば?』
『金属製バッドが見つかった。そこには、裕太くんの血痕も見つかった。』
『え…』
『他にも裕太くんの体を見てみたら、いくつものあざがあった。多分日常的にやられてる。』
『そのお母さん、捕まったんですか?』
『本当なら、こんなに証拠あるから児童虐待の容疑で捕まってる。でも裕太が嫌というの。』
『なぜ?』
『…わからない。』
『他には?』
『いや、これだけよ。私達教師が知っていることは。だから、光と友達になって、裕太を救って欲しいの。』
『いや…救えるのですか?俺が』
『信じてるから』
光は、すごく困っていたけれど、私は話はそれで終わりにして出て行った。