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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第15章 噂 ー前編ー


ミーティングルームまでの道を駆け抜ける。

息が苦しい。でも止まりたくない。
止まったら涙が溢れる。

止まっちゃ、だめだ。

分かってたことでしょ。
私とは違う世界の人なんだから。

あの、熱い目。
高揚した時の表情。

あの顔は、私だけに見せてる顔じゃないんだから。

「!」

ミーティングルームに移動する先輩方の姿が見えて、慌てて角を曲がる。
止まると、やはり涙が溢れてきた。
誰もいない廊下で、少し泣いてから行こう。

「……ぐすっ……」

あの笑顔を。
あの声を。
あの指を。

あの胸の中に抱かれたのは私だけじゃない。
私が怖がって踏み込めない次の段階を、他の子と。

前にも、中庭で女の子と2人でいる時があった。
あの時も、彼女を抱いたりしたの?

何この気持ち。なんで今更。
黄瀬くんが一度だって『私だけ』って言ったことがあった?

あんなにモテる人なんだから、当然でしょ。
嫌だ。こんな汚い感情、嫌だ。
こんな自分、大嫌いだ……!

「ううーっ……」

我慢できずに、嗚咽が漏れる。
胸が苦しい。息がうまく出来ない。
胸が、痛い……痛いよ……助けて。

でも、飲み込まなきゃ。
これから黄瀬くんと付き合っていくなら、絶対にこういうのはつきものなんだ。

平然といられるように、慣れておかなきゃ。

ミーティングルームに入ると、既にミーティングは始まっていた。

目が赤くなっているかもしれないから、丁度良かった。
一番後ろの席に着く。

黄瀬くんが、こちらを振り返った。

思わず目を逸らしてしまったけど、少し驚いた表情のようだった。
バレちゃったかな。大丈夫、だよね。

「じゃあ、後は神崎から来週末からの合宿についての説明を……」

しまった。
私の出番があった。

「で、では、資料を配ります。まず日程は……」

鼻声で説明する私に、誰も何も聞けない微妙な空気が室内に流れた……。


「お疲れ様でした〜」

「おつかれ〜」

「みわっち!」

「あ、黄瀬くん、お疲れさま」

「みわっちどうしたんスかその顔、泣いたの……!?」

「さっきね、DVDの箱を足に落としちゃって。めちゃめちゃ痛かったの」

ミーティング中に散々練っただけあって、なかなか自然に話せていると思う。

「ええっ、見せて! 大丈夫スか?!」



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