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人間と妖と、

第4章 人と人ならざるもの、弐




「――ッ!」


息をのみ、意識を集中させる。


――うわ、かなりヤバい状況。


冷や汗が流れるが、下手に動くこともできない。
アスミは、壁を背にしたまま、周りを見る。
低い動物とも人間とも違う声に、アスミの心臓が早鐘を打つ。
がさり。
木々が揺れる音がして、森の中から、黒い霧をまとった『何か』が飛びだしてきた。


「ッ!」


反射的に横に転がり、攻撃を回避する。
アスミは、息苦しさを覚えながらも立ちあがり、目の前の敵をしっかりと見つめる。だが、心中は不安で包まれていた。


――ホントに、どうすんのよ。


 ▼◇▲


花音は家の中に戻ると、大急ぎで台所へと向かった。
とにかく、誰かに助けを求めなければいけないと思っていた。
台所へ行くと、シャドウとひよりが何やら話しあっていた。


「シャドウ君! ひよりさん! 早く来て下さいっ!」


花音のただ事ならぬ声に、シャドウとひよりの表情が変わる。
ハッと息をのみ、シャドウが台所から飛び出し、玄関のドアを開けた音がした。
ひよりも、今していた作業を止め、その後を追う。


「姫島さん!」


シャドウは、自分の魔力をいつでも発動できるように、意識を集中させる。
それと同時に、いつの間にかかなり強い障気が周りに漂っている事に気付いた。
裏庭に辿り着くと、アスミが黒い霧をまとっている『何か』と相対しているのが目に入った。


「シャドウ!」


シャドウに気付いたアスミが、一瞬だけ黒い霧のものから目を逸らす。その隙に、黒い霧が動いた。


「危ないッ!」


シャドウが魔法を繰り出すより速く、黒い霧がアスミの体をすり抜ける方が速かった。


「う……あ……っ」


全身を激しい痺れが襲い、アスミはぐたりと地面に横たわった。
シャドウが舌打ちをして、魔法を指先から黒い霧へと放つ。
シャドウの魔法を食らい、黒い霧は空中で爆発するように消えていく。


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