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人間と妖と、

第4章 人と人ならざるもの、弐




「……何それ」
「ね、アスミちゃんのその腕に付けてるブレスレッド、凄く可愛いね!」
「え、これ?」


アスミは、シャドウが瘴気避けとしてもらったブレスレッドを、顔の前まで持っていく。
ほのかに光を放っている、青いお守り。
アスミの腕よりも大きいため、意識していないと腕から落ちてしまう。


「……そうだね」
「凄く似合ってるよ! 私幽霊だから、そういうの付けられないんだよねー」
「……ありがとう」


自分の口から、素直な感謝の言葉が出てきたことに驚く。
花音は、その言葉にまた笑顔になりながら、空を見上げる。
いつもより赤く、大きい月。吸い込まれてしまいそうだ。


「こんなに大きくて、綺麗なのに、実は怖いんだねー」
「そうだね。意外だね」


淡々と相槌を打ちながら、アスミは月を一緒に見上げつづける。
なんだか、さっきまでのわだかまりが消えたようだった。
隣に座る幽霊少女は、言葉を止めることなく、朗らかに話し続けている。


「……何、してるの……?」


ハッと顔を元に戻すと、狐優が相変わらず暗い表情で立っていた。


「狐優! どうしたの?」


花音が驚いたような笑みを狐優に向ける。
アスミは反射的に身構えてしまう。
先ほど、彼に対して言ってしまった鋭い言葉の数々を思い出し、気まずい表情になる。
狐優は何か迷ってるようだったが、半歩後ろに下がると、ぼそりと呟いた。


「……さっきのことで……嫌な気分になったんだったら、謝る……」
「……は?」


予想外の言葉にアスミは目を丸くする。
狐優がぐっと唇を噛みしめると、また半歩後ろに下がった。


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