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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第5章 forbidden lovers


 暗く深い海に一艘の小舟が浮かぶ。
船上で腕を投げ出し横たわる女性は、寝返りをうとうとして船体バランスが崩れたので咄嗟に目を覚ました。彼女の腹部には、血液の流れた跡があった。女性は衰弱していたが、ようやく体勢を起こしあたりを見渡すと、瞳の端に涙を溜めた。
眼に映るのは、業火とそこに立つ煙。街に火の手が上がっていた。彼女は直感した。火の手が上がったのはニブルヘイムであると。

 舟に視線を戻せば、果実が積まれていた。数日間を船上で過ごすとしても凌げる程度には用意されている。自分をこの舟へ運んだ人物を思う。彼はシャロンを救ったのだ。この災厄を起こす彼の姿を見て心を傷付けないように。業火に焼かれぬように。
舟にはオールが積まれていなかった。手で漕いでも流れが早く岸へ向かうことが出来ない。女性は息を切らし涙を流しながらその手で漕ぎ続けた。
 あがいてもあがいても岸は遠くなるばかり。
女性はとうとう逆らうのをやめた。
いつしか炎は遠く見えなくなっていた。


 潮に舵を任せ波に揺られて三日ほど経った。
ボロボロになりながら、体力を温存するため眠りについていたシャロンは、コツンという音で目覚める。舟に岩が当たったのだ。岸が近い。シャロンは今ある力を振り絞ってどうにか岩場に上がる。
ゴツゴツとした岩に波が打ち付けられ、髪や服が張り付く。
舟に乗っていた方がかえって楽だったのではないかと思う程だったが、転覆の危険が無くなっただけでも十分だった。なんとか岩場を登り、波が当たらない位置にまで行くと、シャロンはとうとう力尽きて岩場にべたりと張り付いた。
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