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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第4章 砂時計


 神羅屋敷から抜け出したシャロンは、深い森の中を彷徨い歩いて小さな小屋を見つけた。誰のものでもないような朽ちた家屋は雨風をしのぐだけで精一杯という状態だったが、まずはそれで十分だった。時間をかけてそれを少しずつ修繕し、自給自足の生活を営むうち、二十数年もの時が経っていた。

 普段は野生のチョコボを魔物から守ったり、道に迷う旅人を近くの村まで案内する仕事が偶にあるくらいで、殆ど毎日の生活は変わらなかった。
時々近くを散策しては、〈彼〉に繋がる何かがないかと期待を込めるが、収穫はなくただ時間だけが過ぎていった。
 しかし、そんな平凡な日々の他にも変わらぬものがある。それはシャロンの肉体だ。普通であれば肉体の成長が終わり、老化が始まる筈だが、何年も変わらぬ姿のままだった。この異常な自分自身の身体は、忌まわしき過去を一時も忘れさせてくれない。
 更に、シャロンの身体には少しの魔法耐性があり、そして、荊棘の能力も場数を踏むうちにある程度自由に操れるようになった。人離れした能力。元からあったものなのか、もしくは忌まわしき宝条の実験によって少しずつ人から遠ざかっていたのか。だがそのお陰で命拾いした経験もあるのだから皮肉なものだ。

 シャロンは森奥の泉で身体を清め、黒のローブを身に纏うと、ロケット村へ食料調達に出かける。

筈であった。
まずい、物思いに耽っていて魔物の存在に気付かなかった。咄嗟に身を構える。

 だが、すぐにその必要は無くなった。数秒後には真っ二つになった魔物の屍と、その背後に揺れる真っ黒なコートを纏った男が視界に入る。見上げる形であるためか、かなりの長身に見えた。開いた胸元からは逞しい胸筋が覗き、そしてロングコートの横からは長い銀髪が揺らめく。異様であった。今まで会ったことの無いタイプの妖艶な男だった。
 男は長い剣先にわずかに付着した血を払うと、シャロンの元へ来て手を差し伸べる。

「お前……こんな森奥で武器も持たずに何をしている? 密業者でもそんな軽装では挑まないような場所だが」
「助けてくれてありがとう。でも本当は私、とても強いのよ。今は助けられてしまったけれど」

男は聞いた割に特に興味なさそうになおざりな相槌を打って泉からシャロンの身体を引き上げた。
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