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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第10章 叙情詩


 魔晄炉からキャノン砲へエネルギーが集められる。淡いグリーンの光が管を通り暗く無機質な人工物達を照らし出していた。
三人は鉄骨の金属音を響かせながら階段を駆け上がり、ついにキャノン砲へたどり着く。
パネルの前で不気味に笑う男を睨むが、彼は操作に没頭し、三人に気づかずにいた。

「クックック……」
「宝条、そこまでだ!」
「ああ……失敗作か」

しびれを切らしたクラウドが声を上げると、宝条は振り返りクラウドだけを見据え挑発する。
シャロンとヴィンセントのことは視界に入っておらず、まるでクラウドと宝条二人だけの空間にいるかのように。
今の彼を夢中にさせるのは、セフィロス。それだけのようだった。

シスター・レイを発動させる宝条の目的は、セフィロスにエネルギーを送ること。
しかしなぜそんなことをするのかクラウドは理解できずにいた。
宝条が不気味に笑い、クラウドはまたひとつセフィロスの出生の秘密を知る。

「息子が力を必要としている……理由はそれだけだ」
「……息子?」
「あいつは知らないがな」
「セフィロスがあんたの息子?!」

ヴィンセントとシャロンは、クラウドがそれを知らなかったということに初めて気が付き、互いに顔を見合わせた。
当たり前のように持っていた知識だっただけに、話題に出すこともなかったのだ。
クラウドは二人の様子に眉を顰める。

「知ってたのか」
「ああ」
「どうして言わなかった?」
「……聞かれなかった」

クラウドは舌打ちをする。
宝条がその様子を見て愉快、愉快、と手を打ちながら話を続けた。

「私の子を身ごもった女を、ガストのジェノバ・プロジェクトに提供したのだよ」

そこで、クラウドはハッと思い出す。ルクレツィアの祠での会話と、その時のヴィンセントの表情を。
シャロンに視線を移せば、彼女もまた辛そうに目を閉じていた。

「クク……セフィロスがまだ母親の胎内にいるころにジェノバ細胞を……クァックァックァ!」
「き、貴様……!」

ヴィンセントがガントレットを振りかざした時、クラウドがひとつの疑問を宝条に投げかける。

「あんたがこんなことをしているのは……セフィロスへの罪ほろぼし……」

クラウドの言葉を聞き、宝条は手を止めた。そして肩をゆらし、大げさに笑い出した。
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