第9章 ゆっくり(エルSaid)
「エル、お前大丈夫か?」
急にそんなこと言われたものだから、何のことだかわからなかった。でもすぐに理解できた。
今日は約束の、母さんを説得する日。説得っていえるのかはよくわからないけど。
「どうしたんだよ、急に」
「そのまんまだ、大丈夫か?」
見ての通り、俺はいつもみたいに落ち着いてる。不安だったり自信に満ち溢れているわけでもなかった。
ただ、いつも通り。
「大丈夫…って、俺、おかしい?」
ロイに問いかけてみたが何も言わなかった。
「何も言わないのが一番困るんだけど」
「そうじゃなくてだな、なんと言うか、まあアレだ。エルが心配なのもあるけど」
「…完全ではないけど、大丈夫だとは思ってる、どうなるかはわかんないけど」
「…そうか」
ロイは軽く微笑んで席に戻ろうとした。その時にまたロイに呼びかけて、小声で「ありがとうな」と言った。
照れくさかったのかロイは何も言わなかった。