第1章 じっくり
「お、おはよ」
「おはよう」
朝の教室、まだ他のクライスメートは部活の朝練習やらで全く来ていない。
俺は特に入りたいと思った部活もないし、あまり人と会話することが得意でないからどこにも所属していない。
こいつはその中で唯一…とは言え難いが珍しい親友の一人だ。それに幼馴染でもある。
家はそんなに近所ではないが遠くはない。こいつも同じく部活に入っていないので朝はよく会う。
今日は特別俺が少し寝坊をしただけだ。
何でも、こいつは誰もいない教室で一人で居るのが好きらしく朝一番に教室に居る。
それが原因で担任が家族に何か問題があるのでは、と勘違いしてしまい前には呼び出されていたりもした。
その時は不思議に思って本人に聞いてみたが特に何の事件も起きてないそうだ。
「おっ、新しい本か?」
「そうだが」
「お前よく読めるよなあ…読めないわけじゃねえけどすぐに飽きちゃうんだよな」
そう言うとそいつは俺の席の前の席に勝手に座り読んでいる本を眺めた。
静かで、椅子を動かした音がよく響いた。
校舎がグラウンドに反して窓がある為に余り部活内の掛け声は聞こえない。
いつもは練習の音を響かせている吹奏楽部の連中も最近コンクールが近いのか、一箇所とその周りに集まって
一斉練習をしているみたいで、音もあまり聞こえない。
「…静かだな」
「毎日言うよな…そんなだったら朝早くにここに来なくたっていいだろ?」
「だって朝はバタバタして忙しいじゃん。家に居るとうるさくてたまらないからな」
そうやってそいつは左手で頬杖をつきながら笑顔で言った。
俺は少し睨んでみたが、相手は気付かなかったようだった。ただ、また読んでいる本の表紙を睨んでいた。
「読みづらいんだが…?」
「暇なんだもん」
「呆れた」
「ひでぇや」