第5章 一人の時間も必要…なんだよ?
藍沢が去ったあと、扉を閉めて机に座った。
『これ返さなきゃいけないし、私のマイノートに書き写しておこうかな。』
私にはテニス部に入ってからずっと使っているマイノートがある。
そのノートの存在は誰も知らない。
私自身しか知らないノートなの。
いつもヘラヘラしてて、マネージャー業の覚えは悪いし……正直言ってマネージャーには向いてないと思う。
でも氷帝の皆が受け入れてくれてるから頑張ろうって思えるんだ。
頑張ってる姿なんて、見せるのが恥ずかしいから。
このマイノートは私だけが知っていればいい。
ノートにはメンバーの基本情報からテニスの癖などをびっちりと書いている。
そしてドリンクの作り方や、マネージャーの基準としてやらなければいけない仕事も。
昔から覚えることが苦手だった。
分かりやすく言えば暗記が出来ないのだ。
だからマイノートに書いて頑張ってる。
誰にもわかってもらえないけど。
『よし…こんなものかな。青学、立海、四天宝寺、比嘉の基本情報揃った』
あれから数時間が過ぎた。
ずっと休憩もなく机に向かいながらメモを書き写した。
『つっかれたー………』
それもそうだ。
何時間も書物なんて普段はしないものだから。
向日「おーい、名前いるかぁ?」
『あ、がっくん先輩だ!』
ドアの向こう側から声がした。
慌てて椅子から立ち上がって入口の方へ行けば扉を開ける。
『がっくん先輩!会いに来てくれたんですか!?』
向日「はぁ?何言ってんだよ、バカ…!夕食の時間だから呼びに来てやったんだよ。また寝てたら飯食い損ねると思ってなっ」
『夕食…あ!そっか…!ありがとう先輩!』
集中していて忘れていたが、窓の外を見れば日が暮れる夕方になっていた。
向日「そっかって…やっぱり寝てたんだろ!」
『あ、う、うん!いつの間にか寝ちゃってて…さっき起きたの!』
向日「やっぱりな。お前らしいぜ。んじゃ、食堂に行こうぜ」
『うん!』
書き終わったので、返すために借りたメモをポケットに入れて部屋を後にした。