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【ハイキュー!!】行け!烏野高校排球部

第9章 鴉の腹を肥やす


日向のもう一方の肩を組んでいる影山さん、顔面の圧だけで人殺せそうな表情を浮かべている。怖い。そして日向の肩を掴む手にはメキメキと音を立てていそうなほど青筋が立っている。日向の肩爆散しそうである。余程気合いが入っているのだろうか。
「おい2人とも!時間無くなるぞ!」と主将の一声に「「すみません!」」と小競り合いがピタリと止まる。まさに鶴の一声…。
 
 
「よし、お前ら準備いいか?」
 
「「「ウス!」」」
 
 
空気が一纏になるのを感じる。私の肩に手を置く、日向の手に少し力が籠った。円陣を組んでいるからだろうか。潔子先輩と日向に置いている手から皆の気持ちが流れ込んで来る、そんな気分になる。
 
 
「烏野ー!」
 
「「「ファイッ!オース!!」」」
 
 
主将の掛け声に合わせて皆で声を上げる。不安や緊張、プレッシャー、色んなものを吹き飛ばすような声の覇気に身が引き締まった。
 
 
 
ピッ───────!
 
ウォームアップの終了を告げるホイッスルが鳴り響く。もうすぐ、試合が始まる。
 
「よし!皆、整列だ!」
 
 
円陣は解かれて、段々散り散りになっていく。離れていく体温と、その背を見て途端に胸が疼いて仕方無くなる。

円陣を組むことは初めてじゃない。けれども今日のは全く違ったのだ。今までは仲間達を鼓舞すると同時に、自分を鼓舞するものだった。しかし今は違う。コート上に私は居ない。遠く離れた観覧席から、コート上で戦う仲間達を見ることしか出来ない。何て悔しい距離なんだろう。今私には応援すること、激励することしか出来ない。『皆が悔いのないプレイを出来るように、勝利を手にできるように』。この気持ちには嘘偽りない。しかし手を合わせて思っているだけでは、居るか居ないか分からない神様へのお祈りだ。1番大切な皆には何一つ伝わらない。
 
 
「あの!!」
 
 
気付けば声が先に飛び出す。自分で思うより心はハッと口元に手を添えるが、既に皆が振り返っていた。西谷先輩とスガ先輩が「何だ?」「どうしたん?」と声をかけてくれる。ちゃんと私の言葉を待ってくれる。無条件に与えられるその優しさに、私もちゃんと応えたい。

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