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【ハイキュー!!】行け!烏野高校排球部

第9章 鴉の腹を肥やす


岩泉の杞憂は的中し、及川と伊達工の最初の接触から、二口の睨み合いは5分と掛からなかった。一触即発の事態に進展するまでの流れが見事にスムーズで、岩泉は思わず頭を抱える。

当事者の1人である伊鶴は、視線をさ迷わせ、2人の冷戦に真っ青になっていた。漏れなく伊達工の主将の茂庭も負けず劣らず真っ青である。
伊鶴は険悪に耐え切れなくなったのか、後ろを向いてしまう。これ以上は洒落にならなそうだと、及川を引き離すべく岩泉が動いた瞬間、


​──────ベチンッ!!


と鈍い音がする。

決して響く音ではなく、通り過がりであれば『何か音がしたな』程度で済まされるようなものであろう。しかし、その音が“自分のすぐ側”からであれば話は違う。異変に真っ先に気付いたのは、及川と二口。目を向けた先には 瀬戸伊鶴。2人は、再度彼らに顔を向けた彼女に釘付けになる。


​─────彼女の頬には見事な紅葉が現れていた。
それも、“自分自身”で作った真っ赤なものが。


「───は?」

「えええええぇぇぇ伊鶴ちゃんッッ?!」

目の前の女子の突如の“奇行”に、二口は呆気に取られた。当然の反応である。脈絡無く突然自分をビンタした奴がいれば誰でもドン引く。が、その理論が通用していないのが1名。それが及川徹その人である。彼は悲鳴の様な声を上げて『伊鶴ちゃんの顔に傷が!!!!!!』と真っ青になっていた。
他の伊達工部員達も、何だ何だと疑問符を浮かべていた。ざわつく彼らを後目に、伊鶴は赤らんだ右頬を擦りながら口を開く。


「すみません伊達工の皆さん、及川さん。お騒がせして…」

「い、いや。ていうかマネージャーさんその顔、」

「───“ただぶつかっただけなのに”、申し訳無いです」


思ってもいない言葉に、言葉の続きを遮られた茂庭を始め、その場の全員が唖然とする。今しがた自分で頬を引っぱたいておきながら何を言っているのか、そんな台詞が皆の頭の中を過ぎる。


「つ、ついうっかり、顔を…打ちまして。それで、通りがかった二口さんが、怪我の具合を心配してくれまして。そうですよね、二口さん?」

「え、は?いや、」

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