第14章 媚薬
「…ただいま」
カルマくんに家のことを言った。
だからなのか親がいつもより恐ろしく思える。
でも今日は先月出品した絵画の結果が出る日。無理やりにでも会話をしなければいけない。
「あぁ!おかえり!望乃、今回もまた最優秀賞だって!すごいわね!」
元気よく母が言った言葉。
「…ありがとう」
私はその言葉を右から左に流し、上辺だけの感謝の言葉を放つ。
「望乃は本当にすごいな。お父さんは嬉しいぞ」
「…うん」
(またお金が入って嬉しいですか…?)
「お母さん、会社の人に自慢しちゃおうかしら」
「そんな、やめてよ…恥ずかしいよ」
(賞金で買った服でも自慢するんですか…?)
「なに言ってるんだ。お前はいずれ大勢の人に絵を見られるかもしれないんだぞ。このくらいで恥ずかしがってどうする」
「うん…そうなるといいな…」
(それまでお金を取り続けるんですか…?)
頭の中で次々と捻くれた言葉が思い浮かぶ。
(あれ…いつからこんなに性格悪くなったんだっけ…)
さっきまでの幸せな時間はまるで妄想だったのかのように脳裏からかき消される。
「…ねぇ」
「なんだ?」
私は思い切って口を開いた。
「私がE組に行って…怒ったりしないの…?」
普通、怒るはずだ。今まで怖くて聞けなかった。
「なに言ってんだ。それは勉強への力を絵に注いだ結果だろ?好きなことをして、その他がおろそかになってしまった。それで結果が出ていなかったら怒っていたが、結果が出ている。だから怒ったりしないさ」
優しい声で父は言った。
(っふ…やっぱりそうだよね…)
要するに『勉強なんかできても金にならんが絵ができると金になる。だから勉強なんか出来なくてもいいから絵を頑張って、結果を出せ』という訳だった。
「…うん、ありがとう…」
私はそう言って部屋に入った。
なんとなくスマホを見てみるとLINE NEWSにとある記事が載っていた。
(…そうだ!これなら…!)
私はそれを見た瞬間、筆を手に取りキャンパスへと向けた。