• テキストサイズ

空は青く、君は白く。

第1章 光


 照りつける太陽に悪態をつきながら、とぼとぼと一人で、校舎から寮までの道を歩き進める。
春は爛漫。桜も強い風に吹かれ、ちらほらと緑色が見え始めてきた。通り抜ける風はまだ冷たさが残るものの、日差しはチリチリと肌を焦がしている。そろそろ日焼けどめを塗る季節が来るかと思うと、悪態の次にため息が漏れた。
明日から風紀委員の挨拶運動とやらが始まるということで、委員長の金久保先輩のもとで簡単な説明を受け、曜日当番を決めた。わたしは元々学則や規律に従順なタイプではなく、風紀委員だってじゃんけんで負けたから仕方なく請け負ったため、活動に積極的に取り組もうなんて気は毛頭ない。そもそも、髪の毛や服装が乱れたから何だっていうのだ。むしろ取り締まる必要があるのは、授業受けてなかったり、課題提出が遅れたりする奴らだと思う。まぁそうは言うものの、見た目と行いが比例してしまっている世の中だから仕方ないのだけれど。
かく言う私も、ブレザーを着ないで派手な色物のカーディガンを着て、リボンも装着ぜず楽な格好で生活している。別に他所の学校みたいに普通のブレザーならわたしだってちゃんと着ている。かもしれない。でもうちの学校の制服の着にくいのなんの!入学してまず一番最初に不満を感じた。まぁそれは置いておいて、そんな格好をしているため、金久保先輩からは『この1週間だけでもいいから、しっかり制服を着ようね、神崎さん』と釘を刺された。金久保先輩は怒ると怖そうだから、土日明けからは頑張ろうと思う。
あれこれ回想をしているうちに、弓道場の前を通り掛かった。ここを通る度に、いつも的に矢が中る音が聞こえる。それに同調して「善し!」という威勢のいい掛け声が聞こえたり、たまには拍手が聞こえたりもする。弓道部の活動は部外者には全く未知の領域である。
気になってそっと道場の中を覗くと、静寂な空気に包まれて弓を引く部員たちのなかに、真剣な顔で弓を構えている月子ちゃんの姿を見つけた。狙いを定めるようにゆっくりと伸び、そして勢い良く弦を離す。月子ちゃんの矢は見事に的中し、周りからは「善し!」という声が掛かった。
ふと、勉強も部活も生徒会も頑張る彼女を目にして、友達であるものの、私は顔が引き攣ったのが分かった。

「……うん、私には無理だわぁ……」
/ 2ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp