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テニスの王子様 短編集

第8章 続・空腹ガール(木手永四郎)


病院に行かなければならないほど酷い状態だったのか…
どうしてあの時、気付いてあげられなかったのだろう。
今頃、は病院か、自宅か…
入院することにでもなったら…

放課後、俺は部活にも行かずに
全力での家へ向かった。
走っている間も、俺の不安は膨らむばかりだった。

『!!大丈夫ですか!!』

勢い良くの部屋のドアを開く。
俺の心配とは裏腹に彼女は…

『ん、えいしろ、どうしたの。』

彼女は、部屋でお菓子を貪り食っていた。
その姿を見ると、さっきのゾンビのような
雰囲気はこれっぽっちもなかった。

『あなたは一体何を…』

『あ、なんかね私、体重全く増えてなかったみたい。』

『はい?』

『うちの体重計、壊れてたみたいでさ、てへぺろ☆』

はお菓子を食べながら悪びれることなく語った。

『そうだよ、今までどんなに食べても体重増えなかったんだもん。
いきなり5キロも増えるなんてないないないない。』

『…』

『ん、何。』

『俺がどれだけ心配したと思ってるんですか…』

俺はお菓子に夢中のの肩を掴み、
自分の方へ向かせた。少し説教モードが入る。

『うん…えいしろ、ごめん…』

『ダイエットするなとは言いません。
でも、断食なんて危ないことはやめてください。』

『わかった、心配してくれてありがとう。』

まただ、またこの笑顔だ。
俺以外にはきっと見せない笑顔。俺だけの笑顔。
ふわりと軽く微笑むだけだが、
その笑顔が俺の心を洗い流してくれる。

『君は洗剤ですか。』

『?何言ってるの?』

は可愛らしくきょとんと首を傾げた。

ああ…このままを抱き締めたい。
なかなか勇気が出ない俺を後押しするように、
が俺の背中にその細い腕をまわした。

『えいしろ、大好き。』

『俺もです。』

俺もをぎゅっと抱き締めた。
これから先もは俺を困らせるだろう。
だけどそんなことも気にならないくらい、
俺は彼女が愛おしい。
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