第1章 episode Y
「…うぶ?ねぇ、だいじょうぶ?」
優しい声で目を覚ます。
ふかふかのベッド、あたたかな日差し、懐かしい匂い。
ここはどこだろう?
「目、さめた?今コーヒー淹れるから、顔洗ってきな。」
ん?
聞き覚えのある声だ。でも、近いひとじゃない。もっと、遠い人の声。
誰だっけ…。
「どうしたの?頭でもいたい?水飲む?」
そう言って、半開きのドアから覗かせた顔は、いるはずもない人だった。
「え…。あ、あいばちゃん…?」
「うん。え、もしかして、りえちゃん、なんにも憶えてないの?」
「えっと…、なんで私ここにいるんですか…?てか、ここ、どこ…?」
どこか夢のような、現実でない、体がふわふわするような感覚に陥った。
「ここは俺らんち。酔いつぶれてた君を、僕が保護しました。」
といって、にっ、と笑った彼の笑顔はテレビでよくみる太陽のような笑顔だった。