第2章 28日目
「なんで泣きそうなの」
二宮くんが下を向いたままの私の顎を左手で上げて、視線を合わせようとする。目の前には呆れるような少し困った顔の彼がいて、唇を噛んだ。
「…無駄だなんて言うから、」
「うん、何回言わせんの、無駄だよ」
そう言って眉を下げた柔らかい表情を私に見せて。
「デートの日に待ちきれなくて
早めに来た理由が見つからないから
こんな慣れないセットなんかしたりして」
1つずつ、私がわからなかった「無駄な時間」の理由を述べる。
「髪の毛だって。貴女の家に泊まった時のシャンプーのおかげで独りでいる時に自分から香る匂いにまた会いたくなったりして」
息継ぎもなくツラツラと述べるそれに唖然とした私に、可愛い顔してフワリと首を傾げた。
「こんなの凄く無駄じゃない?」