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笑って

第2章 背負うもの


私は元々、陰の気が強すぎて暗い少女だった。

朝より夜に活発で、明るい所より暗い所にいるのが好きで、
海より森に惹かれ、濁った川の水面を見るのが好き。

実家にいるときはずっと疎い、疎まれる存在だった。

でも、神ノ島に行くことになった10歳のときに、
双子の兄だという少年に引き合わされてからは変わった。


朝陽は、私と違って― いや、むしろ真逆な少年だった。

陽の気が強く、よく笑う前向きな少年。

朝から昼まで明るい所で遊び回り、海に飛び込み、
清い川の水をさも美味しそうに飲み干す。


それに、朝陽はとても優しかった。

いつ頃からだっただろうか。


「美夜の笑顔が見たい」


口癖のように言ってくるようになったのは。

私は、真逆の朝陽が苦手で、あまり関わろうとはしなかった。
でもある日、朝陽は無意識に術を使った。

笑えなかった私の為に、強い陰の気を、
自分の陽の気でもって抑えてくれたのだ。

突然世界が明るくなる感覚。
無性に楽しくなった自分に戸惑い、朝陽を見ると、
彼は無表情で私を見つめ返していた。


そうして一言、朝陽は私に

「笑って」

と言った。


少女に笑って欲しかった少年と、笑顔を浮かべた少女は、
『役目』を背負ってたった2人きりで島に住むことになった。

辛いことも大変なこともあったけど、
朝陽が隣にいるときは、笑顔を絶やしたことはない。

笑顔でいることは、私の信念であり、朝陽への感謝でもあるから。

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